日本から14,000km、宇宙よりも遠い彼方に思えたその場所へ。『宇宙よりも遠い場所』雑感
お久しぶりです。
最大規模の10連休であったGWも終わりましたね。
GW期間中、映像文章等媒体問わず8作品を消費したんですが、
その中でも『宇宙よりも遠い場所』について話そうかなーと。
どうしても心が揺さぶられたので、備忘録がてら形に残すね(お前いつも心揺さぶられてるな)
※軽微なネタバレあり
ざっと本作のあらすじを述べると女子高生が南極を目指すガールズジャーニー物。
そこは、宇宙よりも遠い場所──。
何かを始めたいと思いながら、
中々一歩を踏み出すことのできないまま
高校2年生になってしまった少女・玉木マリたまき・まりことキマリは、
とあることをきっかけに
南極を目指す少女・小淵沢報瀬こぶちざわ・しらせと出会う。
高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、
絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、
報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。STORY|TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」公式サイトより
最初は「あぁ、今度は南極物ね。」って印象でした。
女子高生を主人公に捉えた作品って色々あって、
ラブコメ
スポーツ
戦車
キャンプ
ツーリング
ロボット
etc...
王道中の王道である女子高生+α
みたいなジャンル、令和を迎えた現在無限に蔓延しているので
お腹いっぱいなんですよね。王道なので外さないんですけれど。
基本的に萌えに媚びへつらう性欲アニメ嫌いなので
「今度はこういう感じなんすね~」「また異世界ものね~」
ってのが多いんですよ。なんでほぼ自分の感で視聴するんですが
今回大当たりでした。さいこ~~~~~~~~~~~だった!
蓋を開けてみたら、
『少女たちが南極を目指す』という物語が主軸となる本作は、東京アニメアワードフェスティバル2019の“アニメ オブ ザ イヤー部門”、“みんなが選ぶベスト100 テレビ部門”にて第2位に輝き、2018年のベストアニメに選ぶ人も少なくない作品で。
加えて、米紙ニューヨーク・タイムズにて、アメリカ国外の優れたテレビ番組を選ぶ“ベストTV 2018 インターナショナル部門”でも第8位に選出。国や文化を問わず高く評価されるアニメでした。
そんなよりもい(本作の略称)の良さを端的に述べるなら、登場人物の行動原理が「ファック!!!」の精神なんですよ。基本的に。
全員が歩んできた人生において異なる閉塞感を抱えながらも、旅を通じポジティブな行動力だけで打破していく様。
人間の強さはロジックではなく『感情』であることを思い起こさせてくれるのが本作の見どころ。
全員が、日常にはない"なにか"を求めて南極に向かうわけだが、4人それぞれが求めるなにかは異なるんだよね。
ある者は青春を実感するために。
ある者は母親の影を探して。
ある者はただひたすら遠い場所を目指して。
ある者は仲間との日々に心躍らせて。
四者四様の理由で宇宙よりも遠い場所を目指す。
旅を通して、絆を深め 、新しい価値観を得て成長していく。
脚本に限らず演出が抜群によく、語らずに解らせるという綿密な技術が光る。
表情、陰影、音楽の入り方、フレーム、光、色彩。すべての情報に無駄がなく理由があって、それら全てがキャラクターの心情を鮮やかに伝えてくれる。
そんな、南極観測隊が南極に向かう前の過程を、南極に着いてからの生活を至極丁寧に描く王道ロードムービーである…
だけで終わらないんですよ!!!!
ぶっちゃけね、丁寧に描く旅物ってだけで130点なんですが、よりもいは物語の定石をぶっ壊してくるんです。
旅に至るまで、また旅を通じて数多の選択をしてきた彼女らの行動原理があまりにも人間らしいんですよ。
弱くて、ずるくて、痛いところには蓋をして。
『人と人に間にある、決して目に見えない関係性』
人と人とのわかり合えなさ、距離感こそがきっと『宇宙よりも遠い』んですよね。
相手が傷つかないように自分の本心を隠す。
本当は嫌な気持ちなのに場の空気を読む。
周りがこう言っているから自分も合わせる。
彼女達は、それら全てに中指立て、
「ファック!!!!」
と突き抜けるまでに肯定していくんですよ。
自分に嘘をついてまで無理をせず、
本気でぶつかって本気で傷つけ合う。
踏み荒らされたくない自分の心の領域に土足で踏み入り、ぎゅっと抱きしめてくれる。
下手なヒューマンドラマを謳った作品なんか比にならんくらい優しく暖かな人間臭い作品でした。南極の寒さと対比してるのもいいね。
ただ、あまりにストレートな作品って泥臭さを兼ねてしまうのですが、本作は音楽の入り方、色鮮やかな本当に美しい演出、心情描写を語らず、魅せるおかげで美しいが強烈に残るの上手いなぁっておもった。
人と人との関係性で何かしら躓いた経験がある人は割りかしぶっ刺さるのかなーなんて思った。突き抜ける肯定って売れるんだよなーー。ストレートに消費者の心に響くので。
某ワ○ンピースのうるせぇ!行こう!(ドンッ!)
的なね。
南極を目指し、南極に行くためだけに生きてきた少女、小淵沢報瀬という少女がいて。
彼女の母親は元南極観測隊の一員で、南極にて消息を絶ったという過去を持つんですね。
彼女の行動原理は基本的に母親の影を探して、母が心惹かれた南極へと同じ景色を見るために南極を目指す女の子なんです。
彼女は母の影を追うために自分の生き様を南極に捧げるんですよ。
放課後の時間は全てバイトに費やし、周りからは馬鹿にされ、突き放され、無視をされ、冷たい視線を浴びながらも自分を保つ。ずーっと彼女は言われてきたんです。
「南極なんか行けるわけない笑」って。
言わせたい奴には言わせればいい。彼女はそうは言うけど、言うても女子高生ですよ。
まだ、弱く力もない彼女が、それでも毎日毎日働いて100万を稼いで、無謀とも言える計画が速攻破綻しながらも執念でチャンスをものにして南極行きを掴むわけです。
そんな彼女がようやっとのことで南極に足を踏み入れた時に出た言葉が「やったー!」でも、涙をこらえきれず出る嗚咽でもなく、
「ざまぁみろ…ざまぁみろざまぁみろざまぁみろ!!!!!!!!!」
なの、最高じゃないですか?
中指突き立ててるんですよ。誰になんて言われようが私は私。
人生を彩るのは他人なんかじゃなく己なんですよね。
でも、母親の影を探してきたのに到着してざまぁみろはおかしくない?って少し思うよね。そう、少しズレていておかしいんですよ。
そのズレは伏線として南極到着後の話に響いてくるんですが、長くなるのでここでは割愛。
薄っぺらい共感で馴れ合う女子高生を、行動で解らせていく描写が痛快で、かつ涙が止まりませんでした。
涙が出る理由って色々あるんですけれど
報瀬が持っている『感情』は、僕の『感情』でもあるんです。
一緒なんですよ。だから涙が出ちゃうんです。
だっていつも頭にあって、世の中へ言いたいもんね。
クソくらえ。俺は俺だ。って。
心が動かされ、感動をするというのは、僕は絶対に『感情』でしかないと思ってて。
ロジックじゃ心動かされないんですよね。人間って。
自分自身の体験とリンクし、登場人物に自ら心を開いていく。
彼女らに止めどない共感を感じた瞬間、人は激しく心揺さぶられる。
この体験は、私のものだ。って感じた瞬間に人は感動をするんですね。
なのでこの旅は彼女らの物であって、『僕』の体験でもあるんです。
物語に没入できてしまうくらい脚本、演出が緻密なので2018年最高傑作と言われちゃうのも頷けるんですよね。だって僕が南極行ってきたんだもの。
主役の4人もそれぞれ語り足りないくらい好きなんですが脇役であるキマリの親友である高橋めぐみが一番好きです。
彼女はいわば、『主役になれなかった持たざる者』なんですよ。
主人公にはなれない僕らと一緒。
ドラマチックな人生は歩んでいないし、変化も臨んでいないし、実力も資質もない。
決して主役にはなれない、日の当たらない彼女は幼稚園からの親友であるキマリの変化を妬み、執着し、足を引っ張る描写があるんですが、これも最高に人間くさくて、いい。キマリは昔からの友達だから。キマリのことは私が一番知ってるから。自分がキマリよりも優れているから。私がいないとキマリがダメだから。
高橋めぐみは、他人を自分より下に置くことで安息を得るタイプの人間なんですね。
こういうタイプいるよねーーーー。ってか自分もその節ちょっとあるよね。
声を大にして言えないけどね。やっぱ、あるんですよ。人間だから。
そんな彼女が、何者にもなれない、足踏みをしたままの脇役の彼女が。
物語にそう絡んでくるのか~~~~~!ってのも見どころですね!
というネタバレ控えめざっくり雑感でした。
今後、人におすすめのアニメなんですか~って聞かれたときは「よりもいはいいぞ…」から入ろうかなとおもいます。
人間関係ってむずいよなー。
ではでは。